オオカミと少年

「オオカミが来たー! オオカミが来たぞーっ!」

少年は大声で村人たちに呼びかけましたが、誰一人驚く人はいません。

「またあいつか。どうせ今度も嘘だろう」

「……ちょっと。ねぇちょっと!」

「あ、オオカミ」

「あのちょっとこっち来てもらえますか!?」

「なんだよ」

「何ですかこれは。村の人誰も怖がらないじゃないですか!」

「いやぁ…もう5度目だからなぁ」

「何回目だろうが関係ないですよ! 私が吠えたら皆さん一目散に逃げる的な展開でしょう!」

「……お前な、原因はお前が時間通りに来ないからだろうが! 打ち合わせで時間決めんのに毎回遅刻だのブッチだのしやがって。俺の村人に対する復讐心の炎もだんだん弱火になってきたわ。金もらっといてどういうつもりなんだよ!」

「基本的に朝は弱いんですよ。それと『明日は村を襲うぞーっ!』とか考えだしたらなかなか寝付けなくて。あ、前回に限っては完全に私の責任です。それは本当にすいませんでした。……バイト休めなかったんですよ。シフト代わってくれる人がいなくて。クリスマス・イブは人数埋めるだけでも大変なんですよ!? ……確かに、休もうと思えば休めた。しかし私は出勤した。それは何故か!? お客様の笑顔が見たいからです!」

「お前、論点が完全にずれてるぞ。つかさぁ、そんだけ偉そうな事言ってて、今日は今日で遅刻じゃねえかよ!」

「……来る途中の電車で人身事故に遭いまして」

「オオカミが電車乗って地味に移動すんなよ!」

「悪い事に人バラバラになったその場に居合わせましてね……。降りた駅のトイレでしばらく吐いてたんです」

「村人食い殺しに来たやつが何言ってんだよ!」

「焼肉の肉とスプラッタームービーに出てくる肉とじゃ受け取り方違うと思いませんか!? そういう感じですよ!」

「知るか! ……つかな、もう今じゃ誰もが俺を嘘つきだって思ってて、仕事終わっても飲みに誘ってくれんようになってんだよ。どうすんだ、これ!?」

「…それは本当に申し訳ないと思っています。そうですよね……あの! こうなったのは私の責任ですから、村の人たちにオオカミである私が今度こそ本当に来た事を確認してもらいましょうよ。そしたら、もうあなたの事を嘘つき呼ばわりする人はいなくなるはずですと」

「……そうしてくれるか。さっきはキツい言い方してゴメンな」

コンコン。

「すいません~。あの、オオカミですけどぉ~」

「ギャー!オオカミー」

バキューン。

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