取り立て

「まいど」

「あ!エヘヘ・・・こんちわ」

「こんちわじゃないよ、まったく! ……何度も何度も足運んでね、こっちも今日という今日は持って帰んないと商売あがったりなんだよ!」

「いぇ、わかってんですがね。えー……申し訳ないんですがもうしばらく……」

「冗談じゃないよ!あのねぇ、アンタが叶えたい事があるっていうから話を聞いてやって、契約して、散々面倒見てやったんじゃないか。今更手のひら返すような真似されてもね、こっちが困るんだよ!」

「いゃぁ、ほんと、渡したいのはやまやまなんですが、今の私にはどうしようもないことなんで……」

「どうしてゾンビになんかなっちゃったの!」

「いやそれが。……多分こないだの祭りの時だと思うんですけど、気が付いたらどっかで噛まれてたんでしょうね、祭りの途中から意識が無くなって、気が付いたら10日ばかり経っていましてね。家に帰って洗面所の鏡見たら、私の顔がもう見るからにゾンビだったんです」

「……あのね。私もね! ボランティアで悪魔やってるわけじゃないの! ゾンビの魂じゃ成果にならないの! そんなの持って帰ったら課長に大目玉食らったあげく閑職に追いやられちゃうかもしれないんだよっ!」

「どうにもあいすいませんで・・・」

「それにね、今だから言うけど、何なのあなたが申し込んだ取引内容は!『魔女になって宅配業者開業したい』ってのは! 私も色んな人間見てきたけど、あんたみたいなトンチンカンな人初めてだよ!」

「返す言葉もございません」

「しかも宅配始めたら始めたで何だい、『ウチは社員が魔女でございますので、配送は深夜しかいたしません』なんてわがまま言って。競合他社もいる商売なのに変なプライド持っててどうすんの!」

「それには理由があるんですよ。魔女になってからというもの、どうも昼間は外出れない体質になってしまいましてね。壷で妙薬煮込むのが関の山で」

「じゃあさぁ! 初めから薬屋でもやりゃよかったんじゃないの!? 頼むよぉ、お願いだから人間に戻る方法さっさとあみだしておくれよ。魔女になったんだったらさぁ」

「……それがですね、ゾンビを人間に戻す方法はわかったんですけど、魔女のゾンビを人間に戻すとなると、古今東西例のないことでして。あちこちに行って色々と書物を読み漁ったんですが、どうも上手くいきませんで」

「頼むよー……。アンタの魂担保にして、こっちは地獄のほうで後払いってことで資材課に頭下げて色々調達したんだからさぁ。アンタの魂が手に入らないと来月マジで俺ヤバイのよ。決算来たら絶対経理から突き上げ喰らうんだよ。他のところでもちょいちょいやってるから、もう誤魔化せないんだよ。ねぇがんばってよ~。半分だけとかでもいいからさぁ。人間に戻ってよぉ」

「そう言われても無い袖は振れないんですよ。それに、毎日のように催促されてるから最近精神的に不安定になっちゃって、魔術に集中できないんですよ。ホント、死にたくなっちゃう」

「お前ゾンビだから死なないだろ!」

「あ、そうか。……でもまぁそういう訳なんで、今日のところは誠に申し訳ないんですが……お引取り願えませんか? そのうちきっと人間に戻ると思いますんで、そしたらそん時ゃもう、魂の一つや二つポンとお返しできますよ」

「信用していいんだな、その言葉!」

「まぁいつになるかわからない話ですけれどね」

「テメェ……この悪魔!」

「あ、悪魔になれるならそちらで働いて返すという手もある」

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