きんたまぶらり旅 2015-2016 [+α]

年末年始旅行は終わったのだけれど、移動に使った青春18きっぷはまだ2日分が残っている。

きっぷの有効期限は1/10(日)までで、無効になるまでに使わなきゃなぁと思いつつ、平日仕事が終わってからだとたいした距離も移動できないし、時間的にも数時間しか活用できないので、週末土日でどこかにいこう、と考えた。

とはいえすぐに思いつくような行きたい場所も無く、ついに金曜日の夜寝るまでそれを思いつけなかった。

1月9日の土曜、朝ぼんやりと目が覚めて、「シャワー浴びたい……ああ、どうせだから温泉にでも行くか」と考えた。日帰りで行ける温泉ということで、まずは日光を考えたのだけれど、そこへは去年も行ったし同じ所へ行くのもつまらないなと考え、とりあえず「温泉に入る」という漠然としたき希望だけ立ててまたしばらくの間ぼんやりとしていたが、ふと「雪が見たい」という欲望が頭をよぎった。

「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」

というのは川端康成の「雪国」冒頭文だが、これに出てくるトンネルとはJR上越線にある清水トンネルのことで、ぼくも数年前にそこを電車でくぐった際に「ああ、まるで『雪国』のような景色だ」と感じるくらいにトンネルの入り口と出口でまったく風景、そして季節さえ間違えそうな体験をしたのだ。その時は旅行の通過点でしかなかったので、今回これから時間さえ合えば行ってみようと思い、とりあえずインターネットの路線検索で直近の時刻と帰る際の終電を調べた。片道4時間半程度かかり、日帰りの肝は水上駅での接続タイミングだった。入浴後の着替えをバッグに詰めて、駅へと向かった。

出発地となるお馴染みの北朝霞駅まで来て、食事をどうするか考えた。乗り継ぎの空き時間に取っても向こうに着いてから取ってもよいのだが、小腹がすいていたのでコンビニでチューハイとヤマザキのランチパックを買い、改札で切符に4回目の判子を押してもらって電車に乗り込んだ。

とりあえず大宮まで行くのだが、タイミングの良い事に直通の「むさしの」に乗る事が出来た。いつも大宮方面に行くときは南浦和で乗り換えているので、これをショートカットできるのは楽だ。事実、いつもに比べたらあっという間に大宮に到着したというくらいの体感度であった。

大宮駅で、今度は高崎行きに乗り換える。電車はそこそこに空いていて、座る事が出来た。天気が良いのと終電まで乗っていれば良いという安心感から、しばらくうつらうつらした。

高崎からは水上行きに乗り換える。ホームに立ち食いそばの店があり、その繁盛具合と佇まいがとても気になったのだが、つい先ほどパンを食べてしまってお腹もそれほど空いていないので、帰りにまだ開いていたら食べてみようと思いつつ、一度改札をでて駅前の様子を眺め、売店でビールとつまみを買ってからまたホームに戻って水上行きに乗車した。

しばらく乗っていた電車は途中で急ブレーキをかけて停車した。車内アナウンスによると、踏切での警報による一時停車だという。状況を確認するまでしばらくお待ちをという案内を聞いて、すぐに出発するだろうと思っていたのだが、結果的に10分以上その場に停車していた。水上での乗り換えに間に合わないのではという不安があったが、改めて放送されたアナウンスで水上駅から乗り継げるよう調整するという事だったので安心した。

水上駅では普段通路を渡ったホームに停車している電車に乗り換えるのだが、この日は前述のトラブルがあったので、降りたホームに電車が来るということだった。それを待っている乗客の中には、スキーの道具を持っている人もちらほらいる。到着した列車を待ちかねたような勢いで、皆わさわさと乗り込んだ。

そして、件のトンネルに入る。そこを抜けた世界は、やはり雪国だった。

しばらく雪景色を楽しみ、今回の目的地である越後湯沢で降りた。駅ビルは新幹線の停車駅にもなっているということで大きく、広かった。改札を出たそのスペースには食事を取ったりお土産店を買ったりするのに充分な数の店が出ており、既に大勢の観光客でにぎわっていた。

数か月前から計画を立てているいつもの旅行とは違い、今回はその日の朝方思いついたものだから、駅を出てもどこへ行けばよいのか分からない。とりあえず観光案内の看板を見つけて眺め、その前でしばらく考えてからこのあたりのおすすめスポットになっている場所の方角を見当し、近くのコンビニでチューハイを買って歩き呑みしながら辺りの雪景色を楽しむ。

あちこちにスキーのレンタルショップがあり、また特産物を謳った食事処やお土産どころもある。射的屋なんていう、風情のある娯楽施設も見つけたりして面白かった。

そうしてフラフラ歩いていると、ロープウェイやリフトのあるスキー場までたどり着いた。湯沢高原スキー場だ。個人的には、スキー場というのはバスで山奥へ数十分走ってたどり着くようなところという認識があったから、こんなひなびた温泉街の道沿いにドーンと構えられていたのにはびっくりした。特にスキーやスノボをやるつもりはないのだが、興味が出てきたので中へ入った。

スキー場の雪景色はなかなかに爽快でしばらく眺めていたのだが、やはりここで滑る訳ではないということになると飽きてくる。ロープウェー乗り場に行き料金を確認したが、やはり滑らないで往復するだけとなるともったいない金額だったので山頂を眺めに行くのも止め、駅へとまた戻る事にした。

雪景色は何度も写真に収めたのだが、どうしてもいま目の前に見えている光景と写真に収められたそれとでは印象が全く違う。逆に言えばぼくが旅で感じたいのはそういう光景をリアルに感じる事なので、つまり来てよかったという感想が漏れるほどにそれらは素晴らしかったのである。

さて、駅ナカに設置されている温泉に入る。入浴料は800円と高いが、貸出用のフェイスタオルとバスタオルがついてくるし、観光地価格という事で納得した。しかしいざ脱衣し浴場の扉を開けてみると、これが狭い。身体を洗う場所の数と浴槽の広さが合っていない。10人も浸かれば足を延ばしては入れない程度の浴槽だ。ロッカーの数はそれよりも多いので、どう考えても窮屈に感じる。こんな落差を感じたのは、道後温泉本館以来の事だ。

そんな文句を言いつつもしっかりと体を温めるまで湯に浸かる。外の景色が見える訳でも、ジェットバスやサウナがある訳でもないので温まったら早々に出て着替え、本日もう一つの目的である利き酒コーナーを探す。

利き酒は1回500円で、コインを5枚と猪口を渡される。コインを1枚、自分が選んだ酒の機械に入れると猪口一杯分のお酒が注がれる。100種以上の酒があるのでその中から自分が呑みたい銘柄を選ぶだけでも大変なのだが、以前行われた来場者の投票ランキングの結果が貼ってあってある程度の目安にはなる。

酒のアテとして無料で味噌と塩が置いてあり、自由につまむことが出来た。その他1本50円でキュウリが売っていたのでこれを買い、味噌をつけてコリコリ食べながら利き酒する。いや、すでに酒を利こうなどという気持ちは無く、ぼくはひたすら辛口で回りの速そうな酒を選んではチビチビと呑んだ。

5枚のコインはあっという間になくなり、店を出たのだが呑み足りない。すると「八海山ビールあります」という、酒好きには日本酒の銘柄が頭に浮かぶビールが「魚沼らーめん 雁舎」の店頭に貼ってあったので入店した。腹を満たすために入ったのではないのだから、注文はそのビールと味噌だれ餃子、それとせっかくなので南魚沼産のコシヒカリごはんを頼んで、しばらくしてから配膳されたそれらをあっという間に平らげ、ササッとお会計を済ませて店を出た。特にどれも、書き記すほどの美味さではなかったのだが腹は膨れた。

さて、しかしまだ呑み足りない。呑み足りないがもうそれほど金も無い。とりあえず駅の売店でチューハイを購入し、構内に出ている屋台でつまみを探す。ジャンボ焼き鳥やモツ煮や焼トウモロコシなどある中、イイダコ串を購入。注文してから再度炙って温かくする形式の販売方法だった。そうしてようやくぼくは満たされ、酒も充分に廻ったのですっかり良い心持ちになっていた。

やる事もなくなったので帰ろうと改札をくぐり、直近の水上行き電車に乗る。外はすっかり暗くなっていて、雪景色を見るのも電車の車内照明で照らし出された線路沿いのわずかな距離だけで、遠くの山々がどうなっているのかは判らないほどに暗い。

実は越後湯沢が予想以上に楽しかったので帰りの電車を遅らせたのだが、本当はもう一本早い電車に乗って土合駅で降り、一時間ほど散策する予定だった。しかしこの電車を降りたとして、終電までにはもう一本あるが万が一の事が発生した場合には周囲に何もない雪山の無人駅で一晩過ごすことになる。それが心配で降りるかどうかを土合駅で電車の扉が閉じるその直前まで悩み、結局リスクが高すぎるという判断から止めにした。

そのあとは水上駅から高崎行きへの乗り継ぎも問題なくこなし、無事高崎へ着いた。行きがけに気になっていた立ち食いそば屋は丁度店じまいの片づけをしているところで、既に寸胴を洗っていたから無理言って作ってもらえる段階にも無いという事を確認してあきらめた。次回来た際にはぜひここで食事を取りたい。

残された延々と乗り継いで帰るだけの旅程をこなし、出発駅に戻ってきたのは22時過ぎで、計約12時間程度の日帰り旅行だった。

家にいたらゴロゴロして終わりだったろうなと考えると、非常に充実した一日だった。

1回分残った青春18きっぷは翌日の日曜夜に茅ヶ崎まで出かけ、そこから川崎に行って九龍城テイスト溢れるゲーセン「ウェアハウス」でしばらく遊んでから立川へ寄り道し、そこからまた自宅最寄駅までもどってくるという、少々勿体ない使い方をして今回分のきっぷは消化された。

春の青春18きっぷは3月1日から有効になるので、そうしたらまた雪のあるうちに越後湯沢かその周辺に行きたいと思っている。それほどに楽しかったし、雪景色という僕にとっては非日常の光景をすっかり気に入ってしまったのである。

おわり

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