きんたまぶらり旅 2014-2015 [3日目]

2015.1.2

富士見町ー境港

さて3日目。境線の始発で境港駅に向かい、「水木しげるロード」を観光しようと思っていました。インターネットカフェを退店し、昨日ここにくる際に降りた富士見町駅まで雪道を歩きます。

写真:富士見町駅まで歩く。雪は止んでいた

駅、とは言ってもホームと切符の発券機程度しかない簡素な造りの無人駅ですが、そこで始発を待ちます。終電から始発の間にも雪は降っていたらしく、レールの上に雪が積もっている状態。しばらくすると、遠くから踏切の警告音、それからわずかに列車のエンジン音が聞こえてきました。

写真:富士見町駅ホーム

写真:列車到着

列車に乗り込み、境港へ向かいます。

写真:境港駅ホーム

富士見町駅は無人駅でしたから、ここ境港駅の改札を出る際に3回目のスタンプを押してもらいます。駅を出ると、水木しげる先生が漫画を執筆しているところを眺めている鬼太郎、ねずみ男、目玉おやじの像が雪をかぶっていました。ここ境港の「水木しげるロード」は、このように駅前から商店街の端まで、道路両側の歩道に様々な妖怪の銅像が建てられており、全部チェックだけでもかなりの時間を要します。

写真:境港駅前「水木しげる先生執筆中」の像

さて、これだけの像があるということは、当然ながらIngressのポータルとして登録されている可能性が高いという事で、調べてみると銅像全部ではないものの、密集した状態(ファーム)でかなりのポータルがありました。Ingressでハックしては記念に銅像の写真を撮り、次の銅像まで移動しては同じことを繰り返し、という作業が続きます。こういった具合で時間がかかるので、境港滞在スケジュールはかなり多めに取っておいたのです。

写真:雪かき用のユンボが活躍中

そんな感じで街中をブラブラしていたぼくの前に、一台の車が停まりました。運転席の窓が開き、乗っていたおじさんが中から一言、

「Ingress?」

と聞いてきます。チラッとみると車内にはプリントアウトされた境港のIntel Mapが。どうやら車を使ってハックしているみたいです。おたがい頑張りましょう、と軽く挨拶を交わして別れたのですが、しばらくするとおじさんは車で追っかけてきて、

「何だったらこの先のポータルまで車で送ろうか?」

と聞いてきます。嬉しいは嬉しいのですが、こちらにも予定があるため、丁重にお断りしました。好意に甘えればよかったかな。

写真:境港。かなりの積雪

さて、境港に来たのには水木しげるロードの他にもう一つ目的がありました。数年前、ここを訪れる際に調べていて見つけた喫茶店へ行きたかったのです。

その喫茶店「ポパイ」は外観やメニューこそ普通ですが、何とお風呂を貸してくれるのです(300円)。裏にはコインランドリーもあり、洗濯も出来ます。このユニークなサービスは、ここを訪れる船の乗組員さんに向けたものなのでした(もちろん普通の人も利用できます)。

しかし着いてみると正月という事もあってかあいにくお休み。ここでご飯とお風呂を済まそうと思っていたので残念でした。

写真:「ポパイ」店頭

仕方なくポパイを後にして、水木しげるロードからまた駅の方向へ戻ります。足元も悪いし、お店も開いてないので、当初の予定を改めて、早めに次の目的地へ向かう事にしました。

写真:境港駅に戻ってきた

さて、ここからは米子まで行き、そこから備線で岡山へ降りて、四国へ渡る予定。そう思いつつ、青春18きっぷをポケットから出そうと……おや? こっちのポケットだったかな? いや、スボンの中? あれ? うわこれひょっとして……

青春18きっぷ!!

落したぁーッ!!

冷や汗が出ました。つい1時間ほど前、この駅の改札をそれでくぐったのですから、落としたとすれば駅から今まで歩いた道のどこか、です。あわてて今日歩いた道を、スタート地点から同じように歩いて切符を探すことにしました。が、この雪に加え、道路やお店で雪かきをする人たちも出てきました。もし気が付かずにショベルですくわれてポイッ、とされたら見つけるのはほぼ不可能です。しかしここであきらめる訳にはいきません。祈る思いできっぷを探します。

写真:水木しげるロード。このどこかに青春18きっぷか落ちているはず……

往復しましたが見つかりません。駅員さんに切符の落し物が無いか聞きましたが、届けはないとの事。とりあえず駅前の交番にも行って、遺失物届けを出しました。今日ここから目的地である四国の多度津まで行くためのタイムリミットにはあと数時間ありますが、この状況で出てくる可能性は……残念ながら無さそうです。それでももう一度、きっぷが落ちていないか探して歩きます。

「それにしても切符が無くなるなんて……妖怪のせいなのだろうか。そういえばぼくは観光で来たけれど、妖怪よりもIngressの方に夢中になっていたかもしれない。そもそも水木しげる先生に対するリスペクトが足りなかったのかもしれない」

そう思ったぼくは、開館していた水木しげる記念館を訪れる事にしました。先生に挨拶無しで去ろうとしたことが、妖怪「切符落とし」を呼んだんだ……そんな妖怪がいるかどうかは別として……などと考えながら。

写真:水木しげる記念館

水木しげる記念館は、先生が生まれてから今日に至るまでの歴史や制作物などを知る事が出来るところで、当時の貴重な原稿や鬼太郎グッズ、また世界中を旅して入手したお面や人形など、「水木しげる伝」を読んだものならフハッとなること請け合いの品々が展示されていました。しかしこの時点で切符探しにかなりの時間を費やしてしまったため、残念ながらじっくりと鑑賞する時間は残っていませんでした。足早に展示を鑑賞し、そろそろ帰ろうかと出口へ向かったところ、目にした中庭の松の木の見事さに感動! しかも雪が積もっている状態という、普通ではなかなか見られない状態でした。

「妖怪の連中は、『せっかく大雪が降ったのだから、これを観ておけ』と言いたくてぼくの切符を取ったのでは……」

そう思えるくらいに、この記念館に入った事を後悔させない美しさでした。

写真:中庭の松。ここには鬼太郎の家や妖怪ポストなどもある

水木しげる記念館を出て、駅に向かいます。

「もしかしたら、きっぷが落し物として届けられているかもしれない……」

そう思って駅員さんに聞いてみましたが、彼はぼくが数時間前に落し物の相談をしたことをすっかり忘れてしまったかのようにつれない態度。

「落し物の届けは今のところ無いですね」

そう言われては仕方ありません。結構な出費になるけれど、もう一度青春18きっぷを買い直すことにしました。駅員さんにその旨伝えると、彼は発券機をしばらく操作したあと、時刻表をパラパラと調べてこう言いました。

「青春18きっぷ、発売日は12月31日までですね、残念ながらお買い求めいただけません」

全身に衝撃が走ります。まず思ったのは、

「ここから自宅まで帰れるのか?」

という事。財布の中にお金は入っていますが、到底帰れるだけの切符を買える金額ではありません。しかも今は正月期間です。こんな田舎でATMが開いているという保証もありません。そういえばコンビニすら見当たりませんでした。

そこへ追い打ちをかけるように、本日移動するためのタイムリミットとなる列車の発車時刻がやってきます。この時点でとりあえず選択肢が2つ。

「この列車にに乗るか、乗らないか」

とりあえず落した18きっぷの事はあきらめて、米子市まで移動する事に決め、発車ベルが鳴る中米子行きの鬼太郎列車に飛び乗りました。

境港ー米子

境港を出発したこの列車が米子に到着するまでにはあと約50分あります。この間に、この旅行の今後をどうするか、とりあえずの計画を立てなければなりません。iPhoneを取り出して様々な情報をググります。

1.境線には米子空港があるから、米子ー羽田のANAでストレートに帰宅?

いやとんでもない。帰るにしては運賃が高すぎます。クレジットカード精算が出来たとしても、今後の生活を圧迫するのは目に見えています。なので却下。

2.このまま普通にJRや高速バスで帰宅した場合の運賃は?

では青春18きっぷを使わずに、米子から東京まで鈍行列車を使って帰った場合にはいくらかかるのか? もしくは高速バスで東京行きに乗った場合は? 答えはどちらも「12,000円程度」でした。青春18きっぷは11,800円ですから、これをもし買い直すことが出来たとしても同程度の金額を出費していた、そう考えるとだいぶ気持ちが楽になりました。どのみちこの程度の金額は発生する、逆にいえばこの程度で済むと。

3.青春18きっぷの再入手は不可能なのか?

青春18きっぷはJR窓口での販売は終了していますが、チケットショップに行けばまだ売っているかもしれません。早速米子のチケットショップをググります。境線沿いで一番近いその場所は、今日の朝乗った富士見町から歩いて10分程度の場所。まずはそこへ行ってみる事にしました。その店の近くにももう一軒、別なチケットショップがあるようです。わずかな希望が見えてきました。

写真:再び富士見町駅で降りる

再び降り始めた雪の中たどり着いたチケットショップは……年末年始休業中でした。気を取り直してもう一軒、ショッピングセンターに入っているチケットショップに向かいましたが、既にそのテナントは撤退していました。米子市内で青春18きっぷを買う、という希望はなくなりました。

途方に暮れつつも、先ほどの境港に比べると、町の規模からしてかなり不安感は和らぎました。最悪今日移動できなくても、昨日停まったインターネットカフェにもう一泊して計画を立て直すことも出来る。そう思って自分を励ましながら、とりあえずは米子駅まで歩いて向かう事にしました。

写真:雪が降ったりやんだりするなか、米子駅へ歩いて向かう

写真:米子駅前のモニュメント。999を連想させるが、クレジットはない

米子駅売店でビールを買い、グイッと空けます。少々酔わなきゃやってられません。それにしてもどうしたものか。旅行は、計画通りに続けるのであれば今日を含めてあと3日あります。しかし本日のチケット代出費により、その全てを達成することは予算的に難しくなっていました。

「どれを削るべきか? どれを残すべきか?」

ストレートに1日で帰っても2日かけても運賃は同じ。そう考えると、どうせ移動にかかる時間は同じなのだから、帰路という前提を踏まえつつ、途中どこかに寄って観光するのがベターかもしれない、という結論に落ち着きました。

ではどこに寄るか?

これから行く予定だった四国の金刀比羅宮は、帰路から外れるのでボツ。そこから向かうはずだった伊勢神宮は、参拝後伊勢フェリーと豊橋鉄道を使って豊橋まで移動する予定だったけど、その運賃分がもったいないのでボツ。

そう考えながら出したルートは、

1.山陰線を使って関西へ出る

2.伯備線を下りて岡山まで行き、山陽本線ルートを使う

でした。その時点での手持ちは7,000円程度。一気に自宅最寄りの駅までは帰れない金額です。財布の中にあるだけのお金で移動出来て、降りた近くにはATM、出来ればUFJのそれがある駅。それをどこにするか。伯備線で岡山、か。うん、岡山なら確実にあるでしょう。

「でも岡山は前に行ったしなぁ……(余裕が出て来ている)。もし伯備線経由で今日最大移動しようとすれば終点は姫路。……姫路もこないだ行ったしなぁ……。やっぱ山陰線で距離を稼いで……」

そうだ 京都、行こう。

京都なら今抱えている課題を間違いなくクリアできます。最悪鈍行列車旅行をあきらめ、新幹線に乗って帰るいう選択肢も取れるし、そうなった場合には姫路よりは料金も安い。いや、青春18きっぷを販売しているチケットショップも絶対、1件といわずあるはずだ。そして何より重要なのは今夜一夜を明かすためのインターネットカフェ、それも近場に数件あるだろう。

京都だ、京都に向かおう。

そう思って米子の切符販売機で京都行きを入手しようとしたのですが、この機械では鳥取までしか販売していません。とりあえずそれを買って、改札出る時に清算してもらう事にしました。

写真:米子駅ホーム。「海、山、旅のドラマは米子駅から」。本当にドラマありすぎて困っている

米子ー鳥取ー浜坂ー豊岡ー福知山ー園部ー京都

米子から京都までは約8時間半。途中の乗り継ぎで余裕があるのは浜坂駅くらいですが、それもこの雪による各列車の遅延でどうなるかわかりません。段々と暗くなっていく車窓を眺めながら、本日の運行に支障が出ない事を祈ります。

写真:山陰線、日本海側はどこも雪

鳥取から乗り継いだ列車は無事浜坂駅に到着。次の乗り継ぎ列車までまだ時間があるので一度清算して改札を出て、駅前に店があれば空腹を満たすべく何か買おうと思いましたが、みどりの窓口は既に営業終了し、無人駅状態になっていました。仕方がないので勝手に改札をくぐると、駅横に「米田茶店」という名のお土産屋+コンビニのようなお店が。早速店内に入り、晩御飯の品定めをします。

はじめは「ビールとパンとかでいいや」と思っていたのですが、よくみると店内ではおでんやカレーライスも販売しています。しかし心の赴くままに買いたいだけ買ってしまうとこのあと清算するお金が足りなくなるので、おでんとビールで我慢する事にしました。レジにいた女将は物腰柔らかく好感が持て、その対応だけで今日起こった出来事をとりあえず忘れて「ここにまた来たい」などと思うのですから、接客ってホント大事ですね。

乗り継ぎ列車に無事乗車し、おでんとビールで一杯やりながら移動は続きます。食べたあとは持ってきたkindleに入っている「実験人形ダミー・オスカー」などを読んで暇を潰したり、無理矢理寝てみたり。

写真:山陰線移動中も雪は止まず

写真:列車は多少の遅れがあったものの、無事乗り継げた

通常の到着予定を過ぎる事約10分、園部行きの列車は無事京都駅に到着しました。雪はますます強くなっているようです。ここから本日泊まる予定のインターネットカフェまでは歩いて約30分。どこかで傘を買わないと、吹き付ける雪で全身が大変なことになるのは目に見えているほどの降雪でした。

写真:京都駅ホーム

さて、鳥取から京都までの運賃分を清算しなければなりません。そう思って改札に切符を出すと、駅員さんは少々面食らった顔をして、

「えーと米子から……どういうルートでここまで来ましたか?」

と尋ねてきます。山陰線を辿って福知山の方から来ました、と言ったのですが、計算には少々手間がかかるようで、一度奥に引っ込み、しばらくしてから電卓片手に精算料金を告げてきました。

手持ちのお金で清算すると、残金は数百円。もちろんこれでは今晩インターネットカフェに泊まる事が出来ません。ここへ来る最中、事前にネットで調べた限りでは、京都駅構内には24時までやっているATMコーナーがあるはずです。しかし現在時刻は23時40分。あと20分でそこへたどり着き、お金を引き出せなければ一巻の終わり。改めてUFJキャッシュカードに対応しているATMが設置されているコンビニを 探さなければなりません。

「あの、この辺で一番近いATMはどこですか?」

京都駅内の、という事を意味していたぼくの問いに、駅員さんはこう答えました。

「この辺だったら……コンビニとかになっちゃいますね。うん、コンビニですね」

力強い回答でしたが、その発言は本当でしょうか。私のiPhoneでヒットした、マピオンが示す「JR京都駅西口改札 共同ATMコーナー内」という情報は嘘なのでしょうか。しかし、それを確かめている暇はありません。駅構内ATMの存在はあとまわしにして、それ以外で一番近いと思われるUFJ京都駅前店にダッシュで向かいます。

23時50分、無事にお金を降ろすことが出来ました。危ない危ない。

これでとりあえず、今日泊まるインターネットカフェの料金と、自宅まで帰るための運賃、それから今日明日のごはんを食べられる程度のお金を懐に持ったぼくは、まず駅近くのコンビニに入り、傘とチューハイを買ったのです。

時折傘がおちょこになりそうなほどの風が吹く中、目的のインターネットカフェを目指します。

しかしお腹が空きました。

途中でおでんを食べたものの、到底カロリーが足りません。このままどこにも寄らずにネカフェに入店すると、結局カップラーメンを買って終わりになりそうな気がします。そんな事を思っていた矢先、目の前に現れた煌煌とした明かりを放つ一軒の店。

なか卵でした。

もう入るしかありません。こっちはお金を持っているんです。各メニューに対して設定された料金を払えば、誰に咎められることなく大手を振って食事が出来る事が出来るのです。迷わず入店し、券売機の前に立ち、今何を食べるべきなのかじっくりと吟味します。

なか卯王道の親子丼か、それとも季節商品の鍋か。もちろんビールは呑むとして、おつまみはどうするのか。

何度も商品カテゴリの切り替えボタンにタッチしては、やっぱりあっちが、いやこっちも、と迷った末、決めました。

ビール+カレーうどん+かき揚げ単品

まずビールで口を湿らせ、カレーうどんとかき揚げの到着を待ちます。口は既に先ほどのチューハイで湿っているはずですが、仕切り直しです。店員に職権を渡し、窓際の席を陣取ります。目の前は五條大橋の交差点。行きかう車が雪を巻き上げています。良い画だねぇ、と思いつつビールをグビー。

しばらくして配膳されたカレーうどんは、ぼくのこの冷え切った体を芯から温めてくれました。そしてそれをサポートする揚げたてのかき揚げ。サクサク食感をしばし味わった後、カレー汁につけて今度はひたひた食感を楽しみます。

ありがとうなか卯、生きていて良かった。

波乱続きの一日でしたが、ここへ来て美味しい食事を取る事で、気持ち的にもやっと落ち着くことが出来ました。

それらを完食した後店を出て、新雪を踏みしめながらインターネットカフェへ歩きます。流石に人通りはありません。しかしこの冬の京都、素敵。スキー場などと違い、この地に雪が降る日を狙っての旅行なんてそうそう出来ませんから、結果としてこれはこれでとてもラッキーな選択でした。

ああそうだ、ラッキーついでに、明日は雪景色の金閣寺に行ってみようか。

そんな事を思いつつ、インターネットカフェに入店。しばしの睡眠を取る事にしたのでした。

【3日目の移動ルート】

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