夜勤駄話

「そろそろアガりかぁ。今日の夜勤はさすがにキツかった。お前は?」
「僕もですよ。昼から通しだったから結構ツラかったっス。振替で2連休もらえてよかった」
「今日は仕方ねぇけどな。乗り込みあったら文句とか言えんよ」
「あ、で。今日ターゲットになった新館とB-5、またイチかららしいですよ」
「まじで!?」
「さっきの休憩でタバコ吸いに行ったら施設課のウエさんがいて。超ヘコんでましたよ」
「あそこ、先週型組んでコンクリ流したばっかなのになぁ……」
「イカさん、あそこで爆死。それが原因らしいス」
「うわー……」
「トータルで結構ツラいっスよね」
「奥さんもうすぐ出産だろ?」
「そうなんスよ。とりあえずは、出産して母体が安定するまでは伝えずに、外国支部への緊急出張ということにして誤摩化すみたいです」
「だろうな。これが原因で流産されたら目も当てられないからなぁ」
「どのみち伝えなきゃいけない事なんですけどね……」
「イカさんなあ……。俺、昔あの人の下でお世話になった時期があってさぁ」
「マジっすか」
「うん。いい人だったよ。よく酒飲ませてくれたし。グチらないから好きだったな」
「いつかはこうなるポジションとはいえ、やりきれないですね」
「俺たちは下っ端でよかったよ。生きて帰れる確率が高いしな」
「……あ、そういえば、こないだグリーンがウチに来たんですよ」
「何で?」
「ピザ頼んだらヤツ宅配してて」
「うわはははは!」
「昼も夜も働いてんだなぁとか思って」
「あっち、普段はバイトせにゃ食っていけんからなぁ」
「こっちはプライベートだからマスク取ってるじゃないですか。だから俺って分からなかったみたい」
「そりゃそうだろ。俺らレベルなんて覚えられちゃいねぇよ」
「思わず内心、『グリーンのくせに大変ですね』とか思ったり」
「バカお前絶対そんなこと口に出すなよ!」
「わかってますって。わかってますけど……ハハハ!『ありがとうございましたー』って! 普段なら絶対言われない! 死んでも言われない言葉!」
「フフフ。……そういやお前、『外』やった事あったっけ?」
「いえ、まだ全然基地まわりだけですね」
「外……キツいぞ」
「マジッすか」
「あいつら知らないだろうけど、基本的に先回りして待ってるからな」
「あー」
「悲鳴タイミングとかムズいのよ。聞こえなきゃ意味ねぇし」
「はいはいはい」
「『中』は基本受け身だからな……。あ、今回突然だった原因は、書類のミスらしいよ」
「えー! 勘弁してくださいよ! マジっすか!?」
「C区に株式会社ケミカルデルタってあんじゃん?」
「ありますね、あの煙突がこう……」
「ニョーってなってるヤツな。あれウチの名義に書き換えようとしたら何か申請でモメたらしくて、仕方がないから基地晒して時間かせぐかって判断になったらしい」
「うわ……イカさん犬死にですね」
「まあしかたないよ。そういった『もう少しで悪事がバレる物件』の名義書き直したりして俺らのせいにする事でメシ食えてんだから」
「今回は廃液でしたっけ?」
「そうそう。そろそろヤバかったらしい」
「何か最近履歴データの改ざんがキツいらしいんで、その関係ですかね?」
「え、そうなの? ……あぁ、紙で残しときたがるジジィ連中とか未だにいるからな。殺せば済む話だけど、割にあわんしな」
「ちゃんとした社名があるのに、何で世間は『悪の組織』としか呼んでくれないんスかね?」
「名前コロコロ変わるしなぁ……。まぁ言わせておけばいいよ。普通に働いてるヤツよりかは収入とか全然勝ってるしな」
「見返りってそんなにデカいんですかね?」
「仕事中にその話すると下手すりゃ始末されっぞ。やめとけ」
「はい」
「……あの5人クローンだって知ってた?」
「あーそれ聞きました。実際なんか戦闘中に結構死んでるらしいですよね。黄色とか特に」
「そそ。でもロボットの中にスペア1対ずつ載ってんのな」
「最後のポーズで帳尻が合えば誤摩化せますもんね」
「報告動画とかも戦闘申請はピーコ多いらしいよ。上もいちいち確かめないからそれで通るってさ」
「振り付けとかも一緒ですからね」
「新チーム、もうゴーサイン出たみたいよ。新人研修終わったら今のプロジェクト廃案だってさ」
「ハハハ、意味ねー。俺らはユニフォーム変えるくらいで契約延長なのに」
「仕方ねぇけどな。……そういや新館って誰の設計だったんだっけ?」
「元山建の梅本さん」
「あーあの人かー。俺あの人のデザイン好きなんだよなー」
「あの人今回あっち側の格納庫もデザインしたらしいですよ」
「マジで!?」
「メンテ担当に聞いたから確実。あいつら今グレートコンドル乗って来るじゃないですか。あれのAカタバルト、スゲーいいらしいですよ。とにかく楽。帰還誘導から整備開始許可出るまでオート。ランプ付くまでマンガ読んでるって」
「うわー! すげーすげー」
「あ、そうだ。第二格納庫の棟上げ来ます? 俺呼ばれてるんスけど、あっちの担当に話通せば関係作業員扱いで入場許可取れますよ」
「行く行く! 頼むな! 超スゲー! 梅本さんなぁ……」
「とうとう夢だった秘密基地設計リーダーまで辿り着いちゃいましたね……俺も頑張ろう。頑張って改造コーディネーターの1種取ろう」
「でもまさか世間はリタイアした人が秘密基地作ってるとは思わんだろうな。確かに現役に秘密基地任せる訳にはいかないってのはわからんでもないけど」
「つかそもそも誰が設計してると思ってんでしょうね」
「その辺はどうでもいいんじゃない? 考えもしないと思う」
「いろんな悪事がうやむやになるのはウチのせいなんだぜ、とか言いたかったり」
「お前だからそういうこと言うなよ! 知らねえぞ……ウチ殺す時はマジ殺すから」
「……はい」
「そんなに深刻に取るな。次から気をつけりゃいいよ。俺だってアッチとコッチの上が一緒ってのは笑えると思ってんだから」
「あ、やっぱ? でもまさに必要悪ですよね、俺ら。アッチは正義だから、葛藤したりしないように現場で頑張ってる5色には本当の事教えない、って方針は正直可哀想だと思います。バイトまでして頑張ってるのに……グリーンのくせに。ハハハハハ!」
「お疲れさまですー」
「お、交代来た。お疲れさまでーす」
「うあー長かった、今日は特に長く感じたー!」
「ナカガワくーん。食堂なんだった?」
「あ、えーとA定がハンバーグスパで、Bがミックスフライだったかな」
「うお、超ラッキー! 和食系だったらコンビニで済まそうと思ってたけど、よかったー!」
「んー。今日はそばでいいや。シンさん、メシ食ったらパチンコ行きません?」
「無理無理。もう俺食ったら部屋帰って寝るよ。眠い」
「いや何か俺、夜勤終わると目ぇ冴えるタイプなんすよ」
「俺も昔はそうだったけどな。あんまトバすと連休明けツラいぞ」
「ウス。じゃあとりあえず食堂行きましょっか」
「よーし! メシ食って風呂入って寝るぞー! 連休取れたしとにかく今日は寝倒す!」
「じゃあナカガワくん、夜勤組アガりまーす。おつかれさまでしたー」

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