ペット

「……だからうちじゃあ飼えないって言ってるだろ。見つけた場所に戻してきなさい」
「でもかわいそうでしょ、雨に打たれてたんだよ!?」
「ご近所から苦情が来たらどうするんだ」
「そ……そしたら引っ越せばいいじゃないか」
「そんなこと無理に決まってるだろ」
「ニジガキレイダネーィ」
「黒人のどこがいけないのさ」
「しつけが大変だろ。誰がするんだ」
「僕がやるよ。しつけは全部僕がやる」
「出来る訳ないだろ。だいたいそこらじゅうにおしっことかされちゃかなわないんだ。このマンションは買ってまだ間もないんだから」
「トランペットガフキタイナァー」
「おしっこくらいちゃんと出来るようになるよ。もし粗相しても僕が掃除するからさあ」
「散歩どうするんだ。運動不足補うのに家の中荒らされちゃ困るんだよ。ソファーかじったりするかもしれんじゃないか」
「きちんと毎日散歩に連れて行くよ。鎖も付けるからさあ。この黒人は噛んだりしないおとなしい黒人だよ」
「そんなのわからんぞ。見ろこの屈強な肉体を。何かの拍子に怒ったら誰かが大けがするかもしれないぞ」
「そ、それは……」
「ウォゥ、ゴナゲッチャッ」
「そのうちやれバスケをやりたいだの、やれラップをはじめるだの言い出したら、誰がその機材買うと思ってんだ? お前のおこずかいで買えるのか?」
「それは……買えないけど……」
「黒人が全部才能があるって思ってたら大きな間違いだぞ。成長したあげくにミリ・バネリみたいな結末を迎えても面倒見れるって約束出来るのか?」
「……」
「わかったな。元いたところに戻してきなさい」
「……わかったよ。行こう、黒人」
「バンゴハンハナンデショネー」

「……ここでお別れだ、黒人」
「コーラガノミタイ」
「ついてくるな、ついてきちゃダメだってば! ウチでは黒人は飼えないんだってば!」
「♪ドーワ ドーレイーノードーッ」
「さよなら! さよなら黒人!」

少年が流した涙は、大人の階段を上っていくためのパスポートになった。

Be the first to comment

Leave a Reply

Your email address will not be published.


*


このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください